Aさんは昨年自己破産をし、免責許可決定を受けています。
Aさんは今年父親を亡くしました。亡くなったAさんの父親は、Aさんが自己破産したことを知っており、息子であるAさんにお金を残すと無駄に使ってしまうからと、全財産を妻に相続させるという遺言書を遺していました。
遺言書があるとAさんは相続財産を全く受け取ることができないのでしょうか。
Aさんの父親の遺言があった場合
「全財産を妻に相続させる」という遺言があったとしても、Aさん自身には遺言によっても奪うことのできない最低限の相続分があります。
遺留分(いりゅうぶん)と言います。
遺留分の制度は、遺言などがあっても、相続人に対して一定額の相続財産を必ず保障する制度です。相続人が相続ができるであろうという期待を保護し、また相続人の生活の安定などのために設けられている制度です。
Aさんは最低限の相続分を自分に渡してほしいと相続分を受取った相続人に対して請求することができます。(遺留分侵害額請求権といいます)
遺留分侵害額請求権は、「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから1年以内に請求する必要があります。1年間請求をしないままでいると遺留分侵害額請求権は時効により消滅します。
また、相続開始から10年経過した時も同様とされています。(民法第1048条)
司法書士 永野昌秀