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「自己破産」カテゴリーアーカイブ

マンションの住人が管理費を滞納したまま自己破産した場合、管理費はどうなりますか。

Aさんはマンションの管理組合の理事長をしています。
マンションの住人のBさんが管理費を滞納したまま自己破産をしました。
Bさんの居住していた部屋は処分され、Bさんは引っ越したということです。
滞納されたままの管理費はどうなりますか。

 

破産者が滞納した管理費は免責許可決定後は支払い義務がなくなります。
Bさんが自己破産を申立て、破産手続き開始決定が出されると、破産手続き開始決定前に滞納していたマンションの管理費は、免責(借金の支払い義務の免除)許可決定が確定すれば支払い義務はなくなります。

 

滞納された管理費は新しい所有者(購入者)に請求することができます。
法律上Bさんが滞納していた管理費は、新しい所有者(特定承継人)に請求することができます。(区分所有法8条)
管理組合側のAさんは、法律上の権利として購入者に対して滞納した管理費の支払いを請求することができます。
(管財事件となった場合には配当の中から滞納管理費の一部を回収できる可能性もあります。)

 

新購入者は自分が支払った管理費をBさんに請求することはできません。
新しい購入者が支払った滞納管理費分は、本来は前所有者(Bさん)に請求する(求償権)ことができますが、Bさんが免責許可決定を受けた後は、この求償権も免責されます。
新購入者は、Bさんの代わりに支払った滞納管理費をBさんに請求することはできません。

 

実務上、破産者の所有のマンションが処分される際に滞納管理費がある場合は、任意売却の際の売買代金や強制競売の最低入札価格に反映されることになります。

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:自己破産すると強制送還されますか

Aさんは日本在住の外国人ですが、借金の返済が不能となり、自己破産を検討中です。
自己破産をすると、日本に居られなくなったりするのではないかと心配しています。
自己破産をすると強制送還されてしまいますか。

 

自己破産をしても強制送還されることはありません
強制送還(退去強制)とは、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることを言います。
強制的に国外に退去させられてしまう場合の要件は、出入国管理及び難民認定法24条に定められています。

 

対象となるのは主として
・密入国をした場合
・適法に入国していても犯罪行為に関与した場合
・オーバーステイ(在留期間が切れたまま滞在超過となっている)場合
・適切なビザを取得しないまま就労している場合
・就労ビザに定められている資格以外の活動を行った場合
などです。

 

上記のような場合にあたると退去強制になる可能性がありますが、自己破産したことは理由には入りません。

 

Aさんは、自己破産をしても日本に居られなくなるということはありませんし、裁判所から本国に帰るように言われることもありません。

 

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:費用が支払えない場合どうしたらよいですか。

Aさんは日本に住んでいますが、国籍は外国です。
借金の返済ができなくなり、自己破産を検討していますが、費用を支払うことができないのではないかと悩んでいます。
外国人の方が自己破産の費用が支払えない場合どうしたらよいですか。

 

法テラスの民事法律扶助は外国人の方でも利用することができます。
法テラスは、経済的な理由などで弁護士・司法書士などの法律の専門家に相談ができない場合に、法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるよう、総合法律支援法に基づき設立された法務省所管の公的な法人です。

 

法テラスの行っている事業に、民事法律扶助制度があります。
民事法律扶助は、経済的に余裕のない方などが法的支援を必要とする場合に、無料で法律相談を行い、必要があれば弁護士・司法書士の費用等の立替えを行います。

 

民事法律扶助を利用する場合
・法テラスと弁護士・司法書士の専門職、利用者との間に3者契約を結びます。
・法テラスが弁護士・司法書士の費用を立替払します。
・法テラスが立替えた費用を、利用者は月々一定額(5000円~1万円)ずつ分割して償還(返還)していきます。
こうして、経済的な理由により、法的支援を必要とする人たちを援助します。
(自己破産申立時に裁判所に支払う予納金は、原則として立替払いの対象になっていないため、別途用意する必要があります。)

 

援助の対象者は、日本人又は日本に住所を有し適法に在留する外国人個人の方で、収入や資産が一定の基準を超えていない方です。
(自己破産の場合、その他の要件として、免責許可を得られる可能性があることなどが要件になっています。)

 

法テラスの費用立替の要件についてはこちらを参照して下さい。

 

なお、Aさんが本国でも借金をしており、本国でも破産手続きが必要になる場合などには、援助が受けられない可能性があります。

 

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:難しい日本語がわからない場合、どこに相談したらよいですか。

 

Aさんは日本に来て5年程経ちます。
借金の返済ができなくなってしまったので、誰かに相談したいと思っています。
Aさんは日常会話は問題ありませんが、法律用語などを使った日本語は理解できるか自信がありません。
難しい日本語がわからない場合、どこに相談したらよいですか。

 

法テラスで外国語での無料法律相談を受けることができます
日本に住所があり、適法に在留している方で、かつ収入の一定の要件に該当する経済的に余裕のない方に対して、弁護士・司法書士などの無料法律相談を受ける際に、WEB会議システムを利用した通訳サービスが実施されています。

 

このサービスを利用すれば、外国人の方が相談担当者(弁護士・司法書士)と相談をする際に、ネットを通して通訳を介して相談ができます。
対応言語は10か国語(英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語、ネパール語、タイ語、インドネシア語です。2022年2月現在)です。

 

利用にあたっては予約が必要です
利用時間は土、日、祝日を除く朝9時から午後5時までです。
まず、法テラス多言語情報提供サービス(0570-078377)に電話をかけて、オペレーター(通訳の人が出ます)に問い合わせ内容を伝えます。
日本のどこからでも電話はつながりますが、外国からの電話はつながりません。
オペレーターが、相談希望者の最寄りの法テラスの職員につなぎ、オペレーターと相談希望者、法テラス職員で話合い、予約希望日時を聞取りします。
翌日、再度上記電話番号に電話すると相談日時が伝えられ、実際の相談に至ります。

 

外国の方で法律に関する相談などは、自分の言語で相談しないと不安だなと感じる方には利用していただきたいサービスです。

 

法テラス多言語情報提供サービスについてはこちらをご参照ください。

司法書士 永野昌秀

日本に住んでいれば外国人も自己破産できますか

 

Aさんは借金の返済が厳しい状況です。
Aさんは日本に在住していますが、国籍は外国にあります。
日本に住んでいれば外国人も自己破産できるのでしょうか。

 

外国人の方でも自己破産は可能です。
自己破産は破産法という法律に基づく制度です。
破産法には、「外国人は、破産手続及び免責手続において日本人と同一の地位を有する」という旨の規定があります。(破産法第3条)

 

外国人の方でも、日本人と同様に自己破産の申立てをして、借金の支払い義務の免除を受けることができるということになります。

 

日本国内に住所等があることが必要です。
外国人が自己破産の申立てをする場合には、日本国内に住所、居所又は財産を有するときに限りすることができる(破産法第4条1項)とされています。

 

旅行者やホームステイをしている外国の方は対象外ということになります。

 

破産申立にあたって住民票が必要です。
破産申立にあたっては、人物の特定や申立裁判所を決定する際に資料として住民票の添付が求められているため、住民票を入手する必要があります。

 

一定の外国人については、日本人と同様に住民票が発行されます。
住民票が発行される外国人の要件は以下の通りです。
・中長期の日本滞在者(在留期間が3か月以上)
・入管特例法によって定められる特別永住者
・一時庇護許可者又は仮滞在許可者
・出生または日本国籍を失ってから60日以内の人
これらの要件を満たす方は、日本人と同じように市町村役場で「住民票」を発行することができますので、容易に入手することができます。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(2)

 

前回は、遺産分割協議を取り消された事例を紹介しました。今回は取り消されなかった事例を紹介します。

 

Aさんは平成21年7月に父親を亡くしました。
母親はすでに亡くなっており、相続人はAさんと弟の2人でした。
Aさんと弟は平成22年1月に、亡父を被相続人とする遺産分割協議を行い、Aさんが取得した財産は約2億円、弟が取得した財産は約2600万円でした。

 

その後、平成22年5月頃に弟は、弁護士に債務整理を委任し、支払を停止しました。平成23年6月、弟の破産手続開始決定がされ、破産管財人が選任されました。

 

破産管財人はAさんに対して、遺産分割協議のうちAさんの法定相続分(今回の場合は財産の2分の1)を超えて取得した部分が、破産者の支払い停止(平成22年5月)の6か月以内にした詐害行為(債権者を害する目的で財産を減らした)に当たると主張して、否認権を行使(減った財産を破産者に戻すように請求)するとともに、超過取得部分相当額の約9256万円の支払請求の訴訟を提起しました。

 

この事例について、平成27年11月9日の東京高裁は、
・相続人には「遺産分割自由の原則」があるため、基本的にはこれが尊重されるべきである。
・遺産の分割は一切の事情を考慮して行われるものである。
・破産者が遺産分割協議によって少額しか相続財産を取得しなかったとしても、一切の事情を考慮した結果かもしれないため、詐害行為だと直ちに認めることはできない。
・相続人が将来遺産を相続するかどうかは、相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄のため、相続人の債権者が債務者に相続を期待するのは不適当である。
・遺産分割協議は原則として無償行為(破産者が自己の財産を無償で他人に上げてしまうこと)には当たらない。ただし、遺産分割を口実にして、債権者を不当に害する財産処分であると認められるような特別の事情があるときは、否認(破産者から財産を受取った者に対して返却を求める)の対象にあたる可能性がある。
と判断しました。

 

判決に至るまでには具体的な事情が詳細に検討されます。
今回の事例については、債権者を害する意図により遺産分割協議が行われたのではなく、相続に関する一切の事情を考慮して遺産分割協議が行われたと判断されたため、遺産分割協議は取り消されませんでした。

 

これに対し、前回の事例では債権者を害する意図が強いと判断されたため、遺産分割協議が取消されることとなりました。
(前回の事例については「自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(1)」を参照してください)

司法書士 永野昌秀

自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(1)

 

相続人の中に破産者がいる場合に、遺産分割協議が問題となった事例です。

 

Aさんは昭和54年2月に父親を亡くしました。
相続人はAさん、母親と弟の3人でした。
相続財産には父親名義の建物がありましたが、相続登記をしないままになっていました。
母親は平成5年10月に借金の連帯保証人になりました。
(債務者は、Aさんでも弟でもありません。)
借金をした当人が平成7年10月に支払を遅滞したため、債権者は連帯保証人である母親に対し、連帯保証債務の履行(借金を債務者の代わりに支払うこと)と未だに亡父名義の建物の相続を原因とする所有権移転登記を求めました。

 

母親とAさんと弟は平成8年1月に、相続財産の建物について、母親がその持分を取得しないものとして、Aさんと弟の持分を2分の1ずつの割合で所有権を取得する旨の遺産分割協議を成立させ、その旨の所有権移転登記をしました。
母親は債権者に対して、連帯保証債務を分割して支払う旨述べていたにもかかわらず、平成8年3月に自己破産の申立てをしました。

 

債権者は、この遺産分割協議が債権者を害するために行った行為であるとして取り消しを求めました。(詐害行為取消権を行使しました。)

 

上記の事例について、平成11年6月11日最高裁判所は、
・共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となりえる。
・遺産分割協議は、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができる。
・本件の遺産分割協議を詐害行為として取り消すことができるとした原審の判断は正当として是認できる。
と、判断しました。

 

破産者が債権者への配当財産を減らすような行為をした場合に、取消を求めることができるのは債権者だけではありません。

 

破産手続開始決定と同時に裁判所に選任される破産管財人は、破産者が経済的に危機的な状態になって以降に債権者の配当を不当に減らす目的で財産を減らす行為をした場合には、遡って減った財産を返還するように財産を受取った者に対して請求することができます。(否認権といいます)

 

破産管財人に「債権者への配当を不当に免れるため」に遺産分割協議をしたとみなされると、破産管財人に「否認」される可能性があります。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産をすると過去に受けとった相続財産が問題になることがありますか

 

Aさんは自己破産申立の予定です。
Aさんは2年前に父親が亡くなり、相続財産を受け取りました。
自己破産をすると、過去に受け取った相続財産は問題になりますか。

 

相続発生が破産申立時期に近い場合には注意が必要です

たとえばAさんが過去に300万円の預金を相続した場合、破産手続開始決定時に100万円を使っており、手元に200万円が残っていれば、破産管財人によって200万円が債権者へ配当されることになります。(Aさんにはその他の財産がないものとします)

 

自己破産する場合、自己破産申立時に裁判所に対して財産目録を提出し、自分の財産を報告しなければなりません。
申立人は財産目録の中で過去2年間の相続の状況を報告する必要があります。
亡くなった人(関係も)、相続時期、相続したもの、遺産分割協議をしている場合には、遺産分割協議書のコピーも添付することになっています。

 

適切に相続財産を使用し、破産手続開始決定時に財産が手元に残っていない場合には、債権者へ配当がされることはありません。
しかし、相続した金額が大きく、相続の発生が破産申立時期に近いにもかかわらず、相続した財産が残っていない場合には、裁判所から使途についての報告を求められる可能性が高いでしょう。

 

また、相続財産の使途をきちんと説明できなければ「財産隠し」を疑われる可能性もあります。

 

財産目録には正確な相続財産を記載し、使用目的について報告を求められても明確に答えられるようにしておきましょう。

 

司法書士 永野昌秀

遺産分割協議が未了のまま破産手続開始決定がされた場合、遺産分割協議はどうすればよいでしょうか

 

Aさんは500万円ほどの借金があり自己破産申立中でしたが、破産手続き開始決定前に父親が亡くなり、相続が発生しました。

父親の相続財産は持ち家と預貯金が200万円程あります。相続人はAさんと、母親とAさんの弟の3人です。

遺産分割協議が未了のまま破産手続開始決定がされた場合、遺産分割協議はどのようにすればよいでしょうか。

 

Aさんに代わって破産管財人が遺産分割協議に参加することになります。

遺産分割協議は相続財産を最終的に誰が取得するかを決める協議であるため、相続人全員で行わなければなりません。

相続人の中に破産者がいる場合、破産者は相続財産の処分をすることができなくなるため、代わりに裁判所に選任された破産管財人が遺産分割協議に参加することになります。

 

自己破産は、破産者の財産のうち、破産者の経済的な再建に必要なもの以外の財産を債権額に応じて各債権者に配当する手続きです。

自己破産手続き中に破産者が自身の財産を自由に処分できるとすれば、債権者に配当する財産が減少する可能性があります。

このようなことを防止するため破産者の財産の管理・処分権を制限し、破産管財人が代わって財産の管理・処分を行うこととされています。

 

Aさんは自身の遺産分割協議に参加することはできず、代わって破産管財人が他の相続人と遺産分割協議を行い、Aさんの相続分を確定させて債権者へ配当する財産に組み入れていくことになります。

司法書士 永野昌秀

自己破産をしても遺留分侵害額請求ができますか

 

Aさんは昨年自己破産をし、免責許可決定を受けています。
Aさんは今年父親を亡くしました。亡くなったAさんの父親は、Aさんが自己破産したことを知っており、息子であるAさんにお金を残すと無駄に使ってしまうからと、全財産を妻に相続させるという遺言書を遺していました。
遺言書があるとAさんは相続財産を全く受け取ることができないのでしょうか。

Aさんの父親の遺言があった場合
「全財産を妻に相続させる」という遺言があったとしても、Aさん自身には遺言によっても奪うことのできない最低限の相続分があります。
遺留分(いりゅうぶん)と言います。
遺留分の制度は、遺言などがあっても、相続人に対して一定額の相続財産を必ず保障する制度です。相続人が相続ができるであろうという期待を保護し、また相続人の生活の安定などのために設けられている制度です。
Aさんは最低限の相続分を自分に渡してほしいと相続分を受取った相続人に対して請求することができます。(遺留分侵害額請求権といいます)

遺留分侵害額請求権は、「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから1年以内に請求する必要があります。1年間請求をしないままでいると遺留分侵害額請求権は時効により消滅します。
また、相続開始から10年経過した時も同様とされています。(民法第1048条)

 

司法書士 永野昌秀