JeS[y[W

「自己破産」カテゴリーアーカイブ

勤務先が倒産して給与が支払われるか心配!

 

Bさんが勤務していた会社は観光客を主たる顧客としていました。数年前までは業績も好調でしたが、ここ数年は新型コロナウイルスの影響によって売り上げが減少し、ついには倒産してしまいました。Bさんは、退職を余儀なくされましたが給与が支払われるのか心配しています。このような状況に対する公的支援はあるのでしょうか?

 

Bさんは、「未払賃金立替制度」を利用することができると考えられます。この制度は、一定の要件を満たすことを条件として、国が倒産した会社に代わって未払いの給与や退職金の一部を支払うものです。

 

主な条件は以下のとおりです。

 

1 倒産した会社に労働者として雇用されていたこと

・勤務形態は問われないため、パートやアルバイトでも制度を利用できます。
・在籍していた期間も問われません。

 

2 会社が倒産した日の6か月前の日から2年の間に退職したこと

・例えば令和4年11月7日に会社が倒産した場合、令和4年5月7日(倒産日の6か月前)から令和6年5月6日までの間に退職した人が対象となります。

 

3 未払い賃金があることについて証明や確認を受けたこと

・具体的には、「裁判所や破産管財人の証明(法律上の倒産の場合)」や「労働基準監督署長の確認(事実上の倒産の場合)」が必要です。

 

 

この制度では、未払い賃金総額の80%が支払われます。
・ただし、退職時の年齢に応じて限度額が定められています。例えば退職時の年齢が45歳以上の場合、未払い賃金総額の限度額は370万円と定められています。そのため、未払い賃金総額が450万円であったとしても支払われる金額は296万円(370万円の80%)となります。

 

失業したときには雇用保険の「失業手当」を受給される方が多いですが、未払賃金立替制度も併せて利用することができます。
未払賃金立替制度についての詳しい説明は、こちらから確認することができます。

廣川 祐司

自己破産をおこなうと、飼っているペットはどうなりますか

 

Aさんは自己破産を検討していますが、ローンを組んで家族として迎え入れた猫のことが気がかりです。自己破産をおこなうとペットはどのような扱いとされるのでしょうか?

 

結論としては、一般的に飼われているペット(例えば犬や猫)に影響が及ぶことは少ないと考えられます。

 

通常、破産手続きの際には換価処分(所有している財産を売却してお金に換えること)をおこないますが、市場価値が高くないペットはその対象外とされることが多いからです。
また、ローン契約でペットを購入された場合、所有権留保(返済が終わるまで所有者をローン会社にしておくこと)がなされることがありますが、その場合であってもローン会社が第3者にペットを売却することはほぼありません。

 

上記のように自己破産をおこなってもペットを手放さなければならない心配は少ないですが、ペットを飼われている方が破産手続きをおこなう際に注意すべきことがあります。

 

1 申立時にペットのことも正確に伝える
・ペットにかかる費用が高額であることが破産状態に至った原因であったとしても虚偽報告はNGです。ペットの維持費が生計を圧迫している場合、免責後の生活について裁判所から指導が入ることがありますが免責決定に影響することは少ないです。逆に虚偽記載をすることで、裁判所としては「反省していない」と判断して免責決定に影響することが考えられます。
そのため、自分にとって都合の悪いことであっても裁判所には正直に伝えるようにしまし
ょう。

 

2 持ち家は売却対象となることから、ペット入居可の住居を探す必要がある
・自己破産をおこなうと、持ち家は換価処分の対象となり売却されることとなります。
そのため、自己破産後に住む場所を探す必要がありますが、その際にはペット飼育可能なのか確認するようにしましょう。ペット飼育禁止条項が付されている物件でペット飼育をおこなった場合、貸主から契約解除されて直ちに退去しなければならなくなる場合もありますので注意が必要です。

 

                         廣川 祐司

医療費を払えなくなり自己破産しましたが同じ病院に受診できますか

 

Cさんは、5年前に病気を患い近隣のD病院に入院していましたが、金銭的に困窮していたため、入院費の支払いが困難で自己破産をおこないました。
Cさんは、D病院に再度受診したいと考えていますが、断られるのではないか心配しています。過去の未払いが診療に影響することはあるのでしょうか?

 

結論としては、医師や医療機関は過去の医療費滞納を理由として診療を拒むことはできません。そのため、CさんはD病院から診療拒否を受けることはないと考えられます。
なぜなら、医師法19条1条は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定めており、医療費滞納は正当事由に当たらないとされているからです(令和元年12月25日医政発1225第4号)。

 

では、現在も金銭的に困窮しており再度同様のことが生じる恐れが高い場合はどうすればよいでしょうか。

 

その場合には、無料低額診療事業や生活保護を利用することが考えられます。

 

無料低額診療事業は社会福祉法第2条3項に基づく事業で、生活に困窮されている方等を対象に無料もしくは低額で医療行為をおこなう事業です。この事業の対象となる本人資産額や事業対象の範囲などは各医療機関によって異なります。
静岡県内でこの事業をおこなっている医療機関はこちらから確認できます。

この制度についてのご質問や利用申請については、医療機関に直接お問い合わせください。

 

生活保護は、日常生活全般に困窮している場合に利用するイメージが強いですが、何とか生活はできているけれども医療費を払う余裕がないという場合にも利用することができます。
例えば、収入が1ヶ月12万円で生活費は11万円の場合、医療費が1か月1万円以上必要であれば生活保護の対象となります。

 

生活保護の申請や相談は、居住されている地域の福祉課が窓口となります。

                              廣川 祐司

 

自己破産を行うと、現在の勤務先に知られてしまいますか

 

Aさんは、借金が400万円ほどあり自己破産を検討しています。
しかしAさんは、「職場に知られると職場に居にくくなるのではないか」を心配しています。自己破産をおこなうと職場に知られてしまうのでしょうか?

 

基本的には自己破産したことを職場に知られることはありません。なぜなら、自己破産手続きに携わる裁判所職員や司法書士、弁護士には厳しい守秘義務が課されており、たとえ家族であっても手続きについて伝えることはないからです。

 

しかし、以下のような場合に職場に知られてしまうことが考えられます。

1.  労働組合や共済組合など職場に関連した組織から借り入れをおこなっている

 

2.  会社から直接借り入れをおこなっている
自己破産手続きをおこなう際には、誰からどのくらい借金をしているのかを「債権者一覧表」にして裁判所に提出する必要があります。裁判所は、その一覧表を基にして各債権者に通知を発します。そのことにより間接的に職場に知られてしまう恐れがあります。

 

※職場に知られることを避けるためにそれらの借り入れを優先して返済すると、債権者平等の原則に反することから裁判所は「免責不許可」と判断して自己破産自体ができなくなる恐れがあります。

 

3. 退職金見込み額証明書を発行してもらう際に、発行理由を説明できない
自己破産手続きをおこなう際に、現在の職場に正社員として長期間勤務している場合「退職金見込み額証明書」の提出を求められる場合があります。会社の総務部などに発行を依頼する際に理由を尋ねられることがありますが、上手く答えられないと気付かれる恐れがあります。

 

4.官報を通して知られる
破産開始決定がなされると官報(政府が発行している広報誌)に氏名・住所等が掲載されます。職場の関係者がそれを見ることによって破産したことを知ることが考えられます。
しかし、官報を一般の人が見る機会はほとんどないため、極めて稀であるといえます。

 

上記のような理由で絶対に職場に知られないとはいえないですが、多くの場合職場に知られることはありません。

 

職場に知られる恐れがあることを理由に自己破産手続きをためらって放置していると、債務名義を債権者に取られている場合には裁判所から「債権差押命令」が勤務先に届いたり、債権者から勤務先に連絡が入ることによって本当に職場に知られてしまうこととなります。
自己破産すべきかどうかお悩みの方は、できるだけ早く専門家にご相談していただくことをお勧めします。

 

 廣川 祐司

交通事故の被害者が自己破産した場合、保険金は処分されてしまいますか①

 

Aさんは自己破産を検討中に交通事故にあいました。
幸いAさんに怪我はなく、車(評価額30万円程)が壊れただけでした。
Aさんが自己破産をした場合、車の修理費は処分の対象になるでしょうか。

 

物損事故の場合の修理費は処分の対象になります。
交通事故で車や物を損傷させられて、修理ができる場合は修理費用を相手方に請求できます。
修理が不可能な場合、または修理代金が車の評価額を超えてしまう場合(いわゆる全損の場合)には、その車の評価額を限度に相手方に請求できます。

 

修理するにしても、全損になるにしても、修理代や車の評価額の請求権はもともとの車が価値を変えたものにすぎないため、修理代の請求権などは破産者の財産として処分の対象になります。

 

自由財産の拡張の申立てにより修理代金などを手元に残せる可能性があります。
「自由財産の拡張」とは、破産者が自由に処分できる財産の範囲を増やすことを言います。
一定の財産があり、破産管財人が付いている場合(管財事件の場合)に、裁判所の決定によって破産者が手元に残せる財産の範囲を増やせる場合があります。

 

自己破産をした場合に手元に残せる財産は法律で定められています。
破産者が自由に管理・処分できる財産なのでこれを「自由財産」といいます。
具体的には99万円以下の現金と生活必需品(家具、家電)などです。
(詳しくはこちらを参照してください「破産をすると全ての財産を処分されてしまうのですか」「自由財産として認められる財産は、どのようなものですか」)

 

この自由財産は一律に定められているため、破産者ごとの個別の事情にまで対応できるわけではありません。
そこで、本来は自由財産とならない財産でも、破産者の事情に応じ、裁判所の決定によって自由財産として取り扱うことができるようにする制度が設けられています。

 

99万円以下の現金、生活必需品などの財産の合計額で最大99万円までを裁判所の決定により自由財産として認めてもらえる可能性があります。

 

自由財産の拡張がされることにより、破産者ごとの事情に応じた生活の保障が図られることになりますが、債権者への配当額が減ります。
裁判所は自由財産の拡張の決定にあたり、債権者への配当が不当に減ることがないように、破産管財人の意見を聞くことになっています。

司法書士 永野昌秀

自己破産をする場合、親が自分名義で積み立ててくれた預貯金はどうなりますか。

 

Aさんは自己破産をする予定です。
自己破産をするにあたって、親が自分名義で積み立ててくれていた預貯金があることを知りました。
Aさんが自己破産をした場合、この預貯金は処分されてしまうでしょうか。

 

裁判所の判断により処分される可能性があります。
破産者の財産は一定の財産を除いて、原則として債権者に配当されることになります。
親が自分の収入から積み立てた破産者名義の預貯金について、裁判所が預貯金口座の名義を重視して、破産者の財産であると判断した場合には、債権者に配当されることになります。

 

裁判所の判断は具体的事情に即してされます。
親が破産者名義で口座を作成していた場合、親の財産として扱うのか、それとも名義のとおり破産者の財産として扱うのか問題となった場合に、「名義ではなく、出捐者(しゅつえんしゃ)を預金者と判断する」とされた判例があります。(最判昭和48年3月27日民集27巻2号376頁)
出捐者とは、その預金をするためにお金を出した人のことです。

 

通帳や印鑑の管理は誰が行っていたのか、普段の入金は誰がしていたのか、誰の収入が原資になっていたかなどを具体的事情を考慮して、破産者の財産なのか、それとも、親の財産なのか判断することとなります。

 

親が子(破産者)の将来の学費や結婚資金などにあてるために子(破産者)名義で口座を作成し、積立を行っていた場合などには、実質的には親が預貯金していたものとして扱われ、親の財産として判断される可能性があります。

 

ご家族の財産のうち破産者の財産に含まれるものがあるかどうかの判断は、その後の免責手続きにも影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。

 

自己破産をすることで、親が積み立ててくれた預貯金がどうなるか気になる方は、当事務所にご相談ください。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産をする場合に同居をしている家族の給与明細などを提出するのはなぜですか

 

Aさんは自己破産を検討しています。
自己破産をする場合に、原則として家族の財産には影響が出ないとのことですが、申立ての際に同居をしている家族の給与明細などを提出する必要があるのはなぜですか。

 

自己破産申立に際して、家計の収支を提出する必要があるからです。
自己破産申立にあたって、破産者の家計の収支(家計簿)を2か月分提出する必要があります。これは破産者の家計の収支から、支払い不能の状態にあるか、お金の使い途に浪費などがないかを確認するためのものです。

 

この家計簿では破産者と同居家族を1つの世帯として家計の収支を報告するため、破産者の収入だけでなく、同居家族の収入を証明する書類(給与明細や源泉徴収票など)が必要になるということです。

 

Aさんが自己破産の申立てにあたって、家族の収入を証明する書類を提出したとしても、それはAさんの家計の収支を確認するためであって、家族の財産を処分するためということではありません。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産をすると家族の財産(預貯金)は処分されてしまいますか

 

Aさんは自己破産を検討していますが、自己破産をすると家族の財産(預貯金)も処分されてしまうのではないか心配しています。
Aさんが自己破産をした場合、家族の財産(預貯金)も処分されてしまうのでしょうか。

 

原則としてAさん名義以外の財産が処分されることはありません。
自己破産は、債務者(Aさん)と債権者との間の清算手続きです。
破産手続で手放すこととなるのは、原則として自己破産を申立てた本人名義の財産です。
Aさんが自己破産をしたとしても、家族の財産には影響はありません。

 

家族名義の預貯金については注意が必要です。
破産者(Aさん)が家族(妻・子ども)の名義で口座をつくっていた場合、これをAさんの財産とするのか、名義どおり家族の財産とするのかが問題になることがあります。

 

その場合は「名義ではなく、出捐者(しゅつえんしゃ)を預金者と判断する」とされた判例があります。(最判昭和48年3月27日民集27巻2号376頁)
出捐者とは、その預金をするためにお金を出した人のことです。

 

Aさんが将来的な学費などを目的として子ども名義で預貯金口座を作成し、そこに定期的に送金していたなどの場合は、子ども名義の口座であってもAさんの財産と判断され、処分される可能性があります。

 

ご家族の財産のうち破産者の財産に含まれるものがあるかどうかの判断は、その後の免責手続きにも影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。

 

自己破産をすることで、ご家族の財産に与える影響について気になる方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

司法書士 永野昌秀

マンションの住人が管理費を滞納したまま自己破産した場合、管理費はどうなりますか。

Aさんはマンションの管理組合の理事長をしています。
マンションの住人のBさんが管理費を滞納したまま自己破産をしました。
Bさんの居住していた部屋は処分され、Bさんは引っ越したということです。
滞納されたままの管理費はどうなりますか。

 

破産者が滞納した管理費は免責許可決定後は支払い義務がなくなります。
Bさんが自己破産を申立て、破産手続き開始決定が出されると、破産手続き開始決定前に滞納していたマンションの管理費は、免責(借金の支払い義務の免除)許可決定が確定すれば支払い義務はなくなります。

 

滞納された管理費は新しい所有者(購入者)に請求することができます。
法律上Bさんが滞納していた管理費は、新しい所有者(特定承継人)に請求することができます。(区分所有法8条)
管理組合側のAさんは、法律上の権利として購入者に対して滞納した管理費の支払いを請求することができます。
(管財事件となった場合には配当の中から滞納管理費の一部を回収できる可能性もあります。)

 

新購入者は自分が支払った管理費をBさんに請求することはできません。
新しい購入者が支払った滞納管理費分は、本来は前所有者(Bさん)に請求する(求償権)ことができますが、Bさんが免責許可決定を受けた後は、この求償権も免責されます。
新購入者は、Bさんの代わりに支払った滞納管理費をBさんに請求することはできません。

 

実務上、破産者の所有のマンションが処分される際に滞納管理費がある場合は、任意売却の際の売買代金や強制競売の最低入札価格に反映されることになります。

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:自己破産すると強制送還されますか

Aさんは日本在住の外国人ですが、借金の返済が不能となり、自己破産を検討中です。
自己破産をすると、日本に居られなくなったりするのではないかと心配しています。
自己破産をすると強制送還されてしまいますか。

 

自己破産をしても強制送還されることはありません
強制送還(退去強制)とは、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることを言います。
強制的に国外に退去させられてしまう場合の要件は、出入国管理及び難民認定法24条に定められています。

 

対象となるのは主として
・密入国をした場合
・適法に入国していても犯罪行為に関与した場合
・オーバーステイ(在留期間が切れたまま滞在超過となっている)場合
・適切なビザを取得しないまま就労している場合
・就労ビザに定められている資格以外の活動を行った場合
などです。

 

上記のような場合にあたると退去強制になる可能性がありますが、自己破産したことは理由には入りません。

 

Aさんは、自己破産をしても日本に居られなくなるということはありませんし、裁判所から本国に帰るように言われることもありません。

 

司法書士 永野昌秀