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「自己破産」カテゴリーアーカイブ

交通事故の被害者が自己破産した場合、保険金は処分されてしまいますか①

 

Aさんは自己破産を検討中に交通事故にあいました。
幸いAさんに怪我はなく、車(評価額30万円程)が壊れただけでした。
Aさんが自己破産をした場合、車の修理費は処分の対象になるでしょうか。

 

物損事故の場合の修理費は処分の対象になります。
交通事故で車や物を損傷させられて、修理ができる場合は修理費用を相手方に請求できます。
修理が不可能な場合、または修理代金が車の評価額を超えてしまう場合(いわゆる全損の場合)には、その車の評価額を限度に相手方に請求できます。

 

修理するにしても、全損になるにしても、修理代や車の評価額の請求権はもともとの車が価値を変えたものにすぎないため、修理代の請求権などは破産者の財産として処分の対象になります。

 

自由財産の拡張の申立てにより修理代金などを手元に残せる可能性があります。
「自由財産の拡張」とは、破産者が自由に処分できる財産の範囲を増やすことを言います。
一定の財産があり、破産管財人が付いている場合(管財事件の場合)に、裁判所の決定によって破産者が手元に残せる財産の範囲を増やせる場合があります。

 

自己破産をした場合に手元に残せる財産は法律で定められています。
破産者が自由に管理・処分できる財産なのでこれを「自由財産」といいます。
具体的には99万円以下の現金と生活必需品(家具、家電)などです。
(詳しくはこちらを参照してください「破産をすると全ての財産を処分されてしまうのですか」「自由財産として認められる財産は、どのようなものですか」)

 

この自由財産は一律に定められているため、破産者ごとの個別の事情にまで対応できるわけではありません。
そこで、本来は自由財産とならない財産でも、破産者の事情に応じ、裁判所の決定によって自由財産として取り扱うことができるようにする制度が設けられています。

 

99万円以下の現金、生活必需品などの財産の合計額で最大99万円までを裁判所の決定により自由財産として認めてもらえる可能性があります。

 

自由財産の拡張がされることにより、破産者ごとの事情に応じた生活の保障が図られることになりますが、債権者への配当額が減ります。
裁判所は自由財産の拡張の決定にあたり、債権者への配当が不当に減ることがないように、破産管財人の意見を聞くことになっています。

司法書士 永野昌秀

自己破産をする場合、親が自分名義で積み立ててくれた預貯金はどうなりますか。

 

Aさんは自己破産をする予定です。
自己破産をするにあたって、親が自分名義で積み立ててくれていた預貯金があることを知りました。
Aさんが自己破産をした場合、この預貯金は処分されてしまうでしょうか。

 

裁判所の判断により処分される可能性があります。
破産者の財産は一定の財産を除いて、原則として債権者に配当されることになります。
親が自分の収入から積み立てた破産者名義の預貯金について、裁判所が預貯金口座の名義を重視して、破産者の財産であると判断した場合には、債権者に配当されることになります。

 

裁判所の判断は具体的事情に即してされます。
親が破産者名義で口座を作成していた場合、親の財産として扱うのか、それとも名義のとおり破産者の財産として扱うのか問題となった場合に、「名義ではなく、出捐者(しゅつえんしゃ)を預金者と判断する」とされた判例があります。(最判昭和48年3月27日民集27巻2号376頁)
出捐者とは、その預金をするためにお金を出した人のことです。

 

通帳や印鑑の管理は誰が行っていたのか、普段の入金は誰がしていたのか、誰の収入が原資になっていたかなどを具体的事情を考慮して、破産者の財産なのか、それとも、親の財産なのか判断することとなります。

 

親が子(破産者)の将来の学費や結婚資金などにあてるために子(破産者)名義で口座を作成し、積立を行っていた場合などには、実質的には親が預貯金していたものとして扱われ、親の財産として判断される可能性があります。

 

ご家族の財産のうち破産者の財産に含まれるものがあるかどうかの判断は、その後の免責手続きにも影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。

 

自己破産をすることで、親が積み立ててくれた預貯金がどうなるか気になる方は、当事務所にご相談ください。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産をする場合に同居をしている家族の給与明細などを提出するのはなぜですか

 

Aさんは自己破産を検討しています。
自己破産をする場合に、原則として家族の財産には影響が出ないとのことですが、申立ての際に同居をしている家族の給与明細などを提出する必要があるのはなぜですか。

 

自己破産申立に際して、家計の収支を提出する必要があるからです。
自己破産申立にあたって、破産者の家計の収支(家計簿)を2か月分提出する必要があります。これは破産者の家計の収支から、支払い不能の状態にあるか、お金の使い途に浪費などがないかを確認するためのものです。

 

この家計簿では破産者と同居家族を1つの世帯として家計の収支を報告するため、破産者の収入だけでなく、同居家族の収入を証明する書類(給与明細や源泉徴収票など)が必要になるということです。

 

Aさんが自己破産の申立てにあたって、家族の収入を証明する書類を提出したとしても、それはAさんの家計の収支を確認するためであって、家族の財産を処分するためということではありません。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産をすると家族の財産(預貯金)は処分されてしまいますか

 

Aさんは自己破産を検討していますが、自己破産をすると家族の財産(預貯金)も処分されてしまうのではないか心配しています。
Aさんが自己破産をした場合、家族の財産(預貯金)も処分されてしまうのでしょうか。

 

原則としてAさん名義以外の財産が処分されることはありません。
自己破産は、債務者(Aさん)と債権者との間の清算手続きです。
破産手続で手放すこととなるのは、原則として自己破産を申立てた本人名義の財産です。
Aさんが自己破産をしたとしても、家族の財産には影響はありません。

 

家族名義の預貯金については注意が必要です。
破産者(Aさん)が家族(妻・子ども)の名義で口座をつくっていた場合、これをAさんの財産とするのか、名義どおり家族の財産とするのかが問題になることがあります。

 

その場合は「名義ではなく、出捐者(しゅつえんしゃ)を預金者と判断する」とされた判例があります。(最判昭和48年3月27日民集27巻2号376頁)
出捐者とは、その預金をするためにお金を出した人のことです。

 

Aさんが将来的な学費などを目的として子ども名義で預貯金口座を作成し、そこに定期的に送金していたなどの場合は、子ども名義の口座であってもAさんの財産と判断され、処分される可能性があります。

 

ご家族の財産のうち破産者の財産に含まれるものがあるかどうかの判断は、その後の免責手続きにも影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。

 

自己破産をすることで、ご家族の財産に与える影響について気になる方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

司法書士 永野昌秀

マンションの住人が管理費を滞納したまま自己破産した場合、管理費はどうなりますか。

Aさんはマンションの管理組合の理事長をしています。
マンションの住人のBさんが管理費を滞納したまま自己破産をしました。
Bさんの居住していた部屋は処分され、Bさんは引っ越したということです。
滞納されたままの管理費はどうなりますか。

 

破産者が滞納した管理費は免責許可決定後は支払い義務がなくなります。
Bさんが自己破産を申立て、破産手続き開始決定が出されると、破産手続き開始決定前に滞納していたマンションの管理費は、免責(借金の支払い義務の免除)許可決定が確定すれば支払い義務はなくなります。

 

滞納された管理費は新しい所有者(購入者)に請求することができます。
法律上Bさんが滞納していた管理費は、新しい所有者(特定承継人)に請求することができます。(区分所有法8条)
管理組合側のAさんは、法律上の権利として購入者に対して滞納した管理費の支払いを請求することができます。
(管財事件となった場合には配当の中から滞納管理費の一部を回収できる可能性もあります。)

 

新購入者は自分が支払った管理費をBさんに請求することはできません。
新しい購入者が支払った滞納管理費分は、本来は前所有者(Bさん)に請求する(求償権)ことができますが、Bさんが免責許可決定を受けた後は、この求償権も免責されます。
新購入者は、Bさんの代わりに支払った滞納管理費をBさんに請求することはできません。

 

実務上、破産者の所有のマンションが処分される際に滞納管理費がある場合は、任意売却の際の売買代金や強制競売の最低入札価格に反映されることになります。

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:自己破産すると強制送還されますか

Aさんは日本在住の外国人ですが、借金の返済が不能となり、自己破産を検討中です。
自己破産をすると、日本に居られなくなったりするのではないかと心配しています。
自己破産をすると強制送還されてしまいますか。

 

自己破産をしても強制送還されることはありません
強制送還(退去強制)とは、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることを言います。
強制的に国外に退去させられてしまう場合の要件は、出入国管理及び難民認定法24条に定められています。

 

対象となるのは主として
・密入国をした場合
・適法に入国していても犯罪行為に関与した場合
・オーバーステイ(在留期間が切れたまま滞在超過となっている)場合
・適切なビザを取得しないまま就労している場合
・就労ビザに定められている資格以外の活動を行った場合
などです。

 

上記のような場合にあたると退去強制になる可能性がありますが、自己破産したことは理由には入りません。

 

Aさんは、自己破産をしても日本に居られなくなるということはありませんし、裁判所から本国に帰るように言われることもありません。

 

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:費用が支払えない場合どうしたらよいですか。

Aさんは日本に住んでいますが、国籍は外国です。
借金の返済ができなくなり、自己破産を検討していますが、費用を支払うことができないのではないかと悩んでいます。
外国人の方が自己破産の費用が支払えない場合どうしたらよいですか。

 

法テラスの民事法律扶助は外国人の方でも利用することができます。
法テラスは、経済的な理由などで弁護士・司法書士などの法律の専門家に相談ができない場合に、法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるよう、総合法律支援法に基づき設立された法務省所管の公的な法人です。

 

法テラスの行っている事業に、民事法律扶助制度があります。
民事法律扶助は、経済的に余裕のない方などが法的支援を必要とする場合に、無料で法律相談を行い、必要があれば弁護士・司法書士の費用等の立替えを行います。

 

民事法律扶助を利用する場合
・法テラスと弁護士・司法書士の専門職、利用者との間に3者契約を結びます。
・法テラスが弁護士・司法書士の費用を立替払します。
・法テラスが立替えた費用を、利用者は月々一定額(5000円~1万円)ずつ分割して償還(返還)していきます。
こうして、経済的な理由により、法的支援を必要とする人たちを援助します。
(自己破産申立時に裁判所に支払う予納金は、原則として立替払いの対象になっていないため、別途用意する必要があります。)

 

援助の対象者は、日本人又は日本に住所を有し適法に在留する外国人個人の方で、収入や資産が一定の基準を超えていない方です。
(自己破産の場合、その他の要件として、免責許可を得られる可能性があることなどが要件になっています。)

 

法テラスの費用立替の要件についてはこちらを参照して下さい。

 

なお、Aさんが本国でも借金をしており、本国でも破産手続きが必要になる場合などには、援助が受けられない可能性があります。

 

司法書士 永野昌秀

外国人の破産:難しい日本語がわからない場合、どこに相談したらよいですか。

 

Aさんは日本に来て5年程経ちます。
借金の返済ができなくなってしまったので、誰かに相談したいと思っています。
Aさんは日常会話は問題ありませんが、法律用語などを使った日本語は理解できるか自信がありません。
難しい日本語がわからない場合、どこに相談したらよいですか。

 

法テラスで外国語での無料法律相談を受けることができます
日本に住所があり、適法に在留している方で、かつ収入の一定の要件に該当する経済的に余裕のない方に対して、弁護士・司法書士などの無料法律相談を受ける際に、WEB会議システムを利用した通訳サービスが実施されています。

 

このサービスを利用すれば、外国人の方が相談担当者(弁護士・司法書士)と相談をする際に、ネットを通して通訳を介して相談ができます。
対応言語は10か国語(英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語、ネパール語、タイ語、インドネシア語です。2022年2月現在)です。

 

利用にあたっては予約が必要です
利用時間は土、日、祝日を除く朝9時から午後5時までです。
まず、法テラス多言語情報提供サービス(0570-078377)に電話をかけて、オペレーター(通訳の人が出ます)に問い合わせ内容を伝えます。
日本のどこからでも電話はつながりますが、外国からの電話はつながりません。
オペレーターが、相談希望者の最寄りの法テラスの職員につなぎ、オペレーターと相談希望者、法テラス職員で話合い、予約希望日時を聞取りします。
翌日、再度上記電話番号に電話すると相談日時が伝えられ、実際の相談に至ります。

 

外国の方で法律に関する相談などは、自分の言語で相談しないと不安だなと感じる方には利用していただきたいサービスです。

 

法テラス多言語情報提供サービスについてはこちらをご参照ください。

司法書士 永野昌秀

日本に住んでいれば外国人も自己破産できますか

 

Aさんは借金の返済が厳しい状況です。
Aさんは日本に在住していますが、国籍は外国にあります。
日本に住んでいれば外国人も自己破産できるのでしょうか。

 

外国人の方でも自己破産は可能です。
自己破産は破産法という法律に基づく制度です。
破産法には、「外国人は、破産手続及び免責手続において日本人と同一の地位を有する」という旨の規定があります。(破産法第3条)

 

外国人の方でも、日本人と同様に自己破産の申立てをして、借金の支払い義務の免除を受けることができるということになります。

 

日本国内に住所等があることが必要です。
外国人が自己破産の申立てをする場合には、日本国内に住所、居所又は財産を有するときに限りすることができる(破産法第4条1項)とされています。

 

旅行者やホームステイをしている外国の方は対象外ということになります。

 

破産申立にあたって住民票が必要です。
破産申立にあたっては、人物の特定や申立裁判所を決定する際に資料として住民票の添付が求められているため、住民票を入手する必要があります。

 

一定の外国人については、日本人と同様に住民票が発行されます。
住民票が発行される外国人の要件は以下の通りです。
・中長期の日本滞在者(在留期間が3か月以上)
・入管特例法によって定められる特別永住者
・一時庇護許可者又は仮滞在許可者
・出生または日本国籍を失ってから60日以内の人
これらの要件を満たす方は、日本人と同じように市町村役場で「住民票」を発行することができますので、容易に入手することができます。

 

司法書士 永野昌秀

自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(2)

 

前回は、遺産分割協議を取り消された事例を紹介しました。今回は取り消されなかった事例を紹介します。

 

Aさんは平成21年7月に父親を亡くしました。
母親はすでに亡くなっており、相続人はAさんと弟の2人でした。
Aさんと弟は平成22年1月に、亡父を被相続人とする遺産分割協議を行い、Aさんが取得した財産は約2億円、弟が取得した財産は約2600万円でした。

 

その後、平成22年5月頃に弟は、弁護士に債務整理を委任し、支払を停止しました。平成23年6月、弟の破産手続開始決定がされ、破産管財人が選任されました。

 

破産管財人はAさんに対して、遺産分割協議のうちAさんの法定相続分(今回の場合は財産の2分の1)を超えて取得した部分が、破産者の支払い停止(平成22年5月)の6か月以内にした詐害行為(債権者を害する目的で財産を減らした)に当たると主張して、否認権を行使(減った財産を破産者に戻すように請求)するとともに、超過取得部分相当額の約9256万円の支払請求の訴訟を提起しました。

 

この事例について、平成27年11月9日の東京高裁は、
・相続人には「遺産分割自由の原則」があるため、基本的にはこれが尊重されるべきである。
・遺産の分割は一切の事情を考慮して行われるものである。
・破産者が遺産分割協議によって少額しか相続財産を取得しなかったとしても、一切の事情を考慮した結果かもしれないため、詐害行為だと直ちに認めることはできない。
・相続人が将来遺産を相続するかどうかは、相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄のため、相続人の債権者が債務者に相続を期待するのは不適当である。
・遺産分割協議は原則として無償行為(破産者が自己の財産を無償で他人に上げてしまうこと)には当たらない。ただし、遺産分割を口実にして、債権者を不当に害する財産処分であると認められるような特別の事情があるときは、否認(破産者から財産を受取った者に対して返却を求める)の対象にあたる可能性がある。
と判断しました。

 

判決に至るまでには具体的な事情が詳細に検討されます。
今回の事例については、債権者を害する意図により遺産分割協議が行われたのではなく、相続に関する一切の事情を考慮して遺産分割協議が行われたと判断されたため、遺産分割協議は取り消されませんでした。

 

これに対し、前回の事例では債権者を害する意図が強いと判断されたため、遺産分割協議が取消されることとなりました。
(前回の事例については「自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(1)」を参照してください)

司法書士 永野昌秀