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自己破産で遺産分割協議が問題となった事例(1)

 

相続人の中に破産者がいる場合に、遺産分割協議が問題となった事例です。

 

Aさんは昭和54年2月に父親を亡くしました。
相続人はAさん、母親と弟の3人でした。
相続財産には父親名義の建物がありましたが、相続登記をしないままになっていました。
母親は平成5年10月に借金の連帯保証人になりました。
(債務者は、Aさんでも弟でもありません。)
借金をした当人が平成7年10月に支払を遅滞したため、債権者は連帯保証人である母親に対し、連帯保証債務の履行(借金を債務者の代わりに支払うこと)と未だに亡父名義の建物の相続を原因とする所有権移転登記を求めました。

 

母親とAさんと弟は平成8年1月に、相続財産の建物について、母親がその持分を取得しないものとして、Aさんと弟の持分を2分の1ずつの割合で所有権を取得する旨の遺産分割協議を成立させ、その旨の所有権移転登記をしました。
母親は債権者に対して、連帯保証債務を分割して支払う旨述べていたにもかかわらず、平成8年3月に自己破産の申立てをしました。

 

債権者は、この遺産分割協議が債権者を害するために行った行為であるとして取り消しを求めました。(詐害行為取消権を行使しました。)

 

上記の事例について、平成11年6月11日最高裁判所は、
・共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となりえる。
・遺産分割協議は、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができる。
・本件の遺産分割協議を詐害行為として取り消すことができるとした原審の判断は正当として是認できる。
と、判断しました。

 

破産者が債権者への配当財産を減らすような行為をした場合に、取消を求めることができるのは債権者だけではありません。

 

破産手続開始決定と同時に裁判所に選任される破産管財人は、破産者が経済的に危機的な状態になって以降に債権者の配当を不当に減らす目的で財産を減らす行為をした場合には、遡って減った財産を返還するように財産を受取った者に対して請求することができます。(否認権といいます)

 

破産管財人に「債権者への配当を不当に免れるため」に遺産分割協議をしたとみなされると、破産管財人に「否認」される可能性があります。

 

司法書士 永野昌秀

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